地方からフルリモートで働くフリーランスエンジニア、いなリモです。フリーランスは4期目に入りました。
「AIでフリーランスエンジニアは仕事を失うのか」。最近いちばん相談されるテーマです。Xを見れば「契約終了された」「次が決まらない」という声が並び、不安になる気持ちはよく分かります。
この記事では、公開されている市場データと、私が実際にClaudeを使って働いている現場の感覚の両方から、この問いに現時点で言えることを整理します。

- フリーランス市場の案件数・単価が今どうなっているか(データ)
- 「末端から厳しくなる」と言える理由と、その反証データ
- 原因はAIだけなのか、景気や出社回帰との切り分け
- 私がAIをどう使い、どこに力を入れているか
結論:市場全体の数字はまだ崩れていない。ただし下からじわじわ来ている
先に、この記事の結論です。
- 案件の総数や平均単価は、公開されているデータではむしろ増えるか横ばいで、取り合いというほどの縮小は市場全体の数字にはまだ出ていない
- 一方で、ジュニアや定型作業中心の案件、フルリモート前提の案件には、いくつかの逆風が重なっている
- その逆風はAIだけが原因ではなく、内製化・金利・コロナ後に採りすぎた反動・出社回帰が混ざったもので、AIはその引き金というより加速装置に近い
- じゃあ何をすればいいかというと、作業をこなすだけの立ち位置から一歩上がって、AIを使い倒して守備範囲を広げること

データで見る:フリーランス市場は今どうなっているか
案件の「発生数」はむしろ増えている
不安をあおる前に、まず数字から見てみます。レバテックの調査では、ITフリーランスの案件発生数は昨年比149%で過去最高(2025年12月時点)、案件希望者数も昨年比128%と、どちらも伸びています。
内訳を見ると、AI関連の案件はChatGPT公開(2022年11月)以降およそ6.2倍、DX関連案件は昨年比182%と、AI・DX領域が全体を牽引しています。
「案件が減って取り合いになっている」という肌感は、少なくとも市場全体の数字にはまだ出ていません。
ただし「発生数」は募集がかかった件数であって、下流の定型的な案件と上流のPM/PMO案件では動きが違います。総数が増えていても、自分のいる層まで増えているとは限らない。そこは正直、気をつけて見ないといけないところです。
平均単価は横ばい〜微増。ただしAI活用度で差がつき始めた
単価も同じ傾向です。Findyが2026年1月にFindy Freelance登録者265名を対象に行った調査では、平均月単価はおよそ80万円、時間単価も微増でした。
注目したいのはその中身です。同じ調査で、コードの51%以上をAIで生成している層の月単価が約84万円、25%以下の層が約73万円台と、月10万円ほどの差がついていました。回答者の約8割が生成AIで生産性が上がったと感じ、約4分の1が正社員への転職を検討しているという結果も出ています。

複数の市場レポートでも、AIに対応できる層は単価が伸び、従来型のコーディング中心は横ばい、という「K字型」の二極化(上と下に分かれていくこと)が指摘されています。数字は媒体によって幅があるので、細かい値より方向を見るくらいがちょうどいいです。

フルリモート・地方向けの椅子は減っている
地方在住の私にとって切実なのがここです。レバテックの市場動向(2026年7月発表)でも、フルリモート案件の比率が下がっていると報じられています(具体的な比率は調査によって幅があります)。転職市場でも「原則出社」の求人が2023年後半以降増えています。
これはAIの話とは別軸で、出社回帰(コロナ明け)が主因とされます。私が付き合っているエージェントの担当者からも、フルリモートが減っているという話は前から出ていて、理由は「出社回帰」と説明されています。AIが理由だという説明は、少なくとも私はまだ聞いていません。
| 指標 | 調査主体・時点 | 状況 |
|---|---|---|
| フリーランス案件の発生数 | レバテック / 2025年12月 | 昨年比149%・過去最高 |
| AI関連のフリーランス案件 | レバテック / 2025〜2026年 | ChatGPT公開以降 約6.2倍 |
| フリーランスの平均月単価 | Findy / 2026年1月・登録265名 | 約80万円・横ばい〜微増 |
| コードの51%以上をAI生成する層の月単価 | 同上 | 約84万円(25%以下の層と約10万円差) |
| フルリモート案件の比率 | レバテック市場動向 / 2026年7月 | 比率が縮小(具体的な数値は調査により幅) |
それでも「末端から厳しくなる」と言える理由
市場全体が崩れていないのは事実です。それでも私が「下からじわじわ来ている」と見ているのには、3つ理由があります。
1. ジュニア・若手の求人が細っている
各社の調査を引用した報道によると、スタンフォード大学のAI Index(2026年版)では、22〜25歳の若手ソフトウェア開発者の雇用が2024年以降およそ20%減少したとされています。
AIが「誰でもできる作業」を吸収すると、真っ先に影響を受けるのは、その作業で経験を積んでいた入口の人たちです。
2. 発注側の内製化が進みやすくなった
生成AIで単価あたりの生産性が上がると、「外注するより内製したほうが速くて安い」が一部で成立し始めます。SIerやSESの人月モデル(時間をかけるほど売上)と、時間を短縮するAIは構造的に相性が悪い、という指摘があります。これは識者の論考であって統計ではありませんが、発注者の立場に立つと理屈は通ります。
3. SESの現場から不安の声が出ている
2026年の春ごろから、Xで、4月以降クライアントの稼働が落ちている、経営層からSESを減らしてAIに寄せろと言われた、といった内容の投稿が拡散し、SES関係者から同意の反応が集まりました。個人の投稿なので統計的な裏づけはありませんが、こういう声が一定数出ていること自体は事実です。

原因の切り分け:AI単独か、複合要因か
海外のレイオフのニュースはよく引き合いに出されます。ただ、ここは落ち着いて見たほうがいいと思っています。
人材コンサルのChallenger, Gray & Christmasの年末レポート(2026年1月公表)によると、2025年に米国で発表された人員削減は約120万人(正確には1,206,374件、前年比+58%=およそ6割増)で、2020年以来もっとも多い水準でした。ただし、そのうちAIを直接の理由とするものは約5.5万件(54,836件)で、全体の5%弱です。削減理由として最も多いのは市場・経済環境や事業所の閉鎖、組織再編などで、AIではありません。Microsoft や Salesforce、Amazon が削減の際にAIへ言及したとも報じられていますが、これは各社の説明であって、実態がすべてAIによる代替とは限りません。
つまり、大量のレイオフが起きているのは事実でも、そのうちAIを名指しした分はまだ一部にとどまります。構造的な背景としては、金利上昇とコロナ後の過剰採用の調整が主因で、AIは株主向けの説明の看板に使われている面がある、というエコノミストの指摘もあります。数字の分け方で見ても、中身を見ても、AIは変化の主因というより加速装置、という見方のほうが今のところ実態に合っています。
日本に目を移すと、東京商工リサーチによれば、2025年(暦年)の上場企業の早期・希望退職は43社・1万7,875人で、人数は前年比で約8割増。しかも約7割は黒字企業で、業種は電気機器が18社と約4割を占めます。これは電機メーカーの構造改革が中心で、ソフト開発職の直接的な削減とイコールではありません。
AIは変化の「引き金」というより、もともと動いていた変化の「加速装置」に近い、というのが現時点での私の理解です。
「エンジニア不要論」と「むしろ増える論」
どちらの言い分にも理があるので、公平に並べてみます。
| 論点 | 不要になる、という見方 | むしろ増える、という見方 |
|---|---|---|
| コード生成 | 定型実装はAIで足りる | 要件定義・設計・レビュー・保守は人が要る |
| ジュニア | 入口の求人が約2割減 | 消滅ではなく育成パイプラインの再編 |
| 内製化 | 外注・SES・フリーの椅子が減る | 社内エンジニアの需要はむしろ増える |
| 市場全体 | テック採用減、SESの不安の声 | フリー案件は過去最高、中途需要も高水準 |
| 全体の流れ | 人月が要らなくなる | 安くなった分だけ新規開発が増える(ジェボンズのパラドックス) |
「むしろ増える」側にも具体的な裏づけはあります。効率化でかえって需要が増える例として、放射線科医(10年前に「AIで不要」と言われたが雇用は増えた)がよく引かれます。GitHubの国内アカウント数も伸びています(1年で約31%増、300万超)。ただしこれは職業エンジニアの数そのものではありません。
経済産業省が「2030年に最大79万人のIT人材が不足する」と試算したことがよく引用されますが、これは2019年の、生成AIを前提としない試算です。今の議論の根拠としてそのまま使うのは無理があります。
私の立場は「エンジニアの総数は増えても、言われた作業をこなすだけのフリーランスの椅子は減っていく」というものです。あくまで見立てなので、言い切りはしません。
正社員なら安泰か
「じゃあ正社員に戻れば安全か」も、単純ではありません。
SES事業の会社だと、案件が切れると待機要員になります。その間の居心地の悪さは、フリーランスの「次が決まらない」ときと近いものがあると思います。大手の自社開発やメーカーでも、黒字のうちに人を減らす動きがあるのは前に書いた通りです。大手企業では早期退職の制度を設けるところも珍しくなく、一定の年齢を超えると外に出てほしい、という空気が生まれることもあります。
私は待機になったことはありませんが、正社員時代、待機になった同僚が日中ずっと自社で資格の勉強をして時間をつぶしている姿を、何度か見ました。しんどそうでしたね。

もちろん、安定した給与と社会保険、育成の仕組みは正社員の大きな強みです。「AIが不安だから正社員に戻る」というのも、私はじゅうぶん合理的な選択だと思っています。否定はしません。
私がやっていること(今の現場のリアル)
最後に、私自身が働き方をどう変えてきたかを書きます。ここからは数字ではなく、私の体感の話です。
コードはほぼ手で書かなくなった
今の案件では、ソースコードを自分で書くことはほとんどなくなりました。書いてもごく微修正くらいです。設計書の作成・更新も、Excel や Word、Confluence 向けのドキュメントを Claude で生成する「仕組み」を自分で組んで、そこに乗せています。
コードレビューも、まず Claude に通します。規約違反や仕様の取りこぼしはすぐ出てくるので、人間は最終的な判断だけをする形になりました。
- 減った:ドキュメントとソースコードの突き合わせのような、単純な確認作業
- 減った:有識者への質問(先にAIで調べて直し、あとから確認する流れになったため)
- 増えた:Claude Code の「仕組み」そのものを作って手入れする仕事
同じ成果物が、体感で半分の時間で出る
1日にこなせる量は、目に見えて増えました。同じ成果物が体感で半分くらいの時間で出せる感覚です。
手が空くぶん、ほかのメンバーが詰まったタスクを引き取るのも早くなりました。もともとインフラ周りは得意ではなかったのですが、AIに聞きながら進められるので苦手意識がかなり薄れて、対応できる範囲が広がりました。
「調べる→作る→直す」のサイクルが速く回るので、事前のすり合わせにかける時間も減りました。多少の手戻りや認識のズレが起きても、作り直しが速いので取り返しがつきます。以前ほど「きっちり聞いてから作る」を厳密にやらなくても、回るようになりました。

発注者から見て「切ると困る人」でいる
結局のところ、AIがあってもなくても、契約を切られにくいのは「いなくなると困る人」です。仕様を決められる、品質を担保できる、段取りができる。この辺りは 契約終了されるフリーランスエンジニアの特徴 にも書いた通りで、AIはその基準を少し引き上げるだけだと思っています。
正直に言うと、私自身は案件を継続できているので、まだ本格的に次を探してはいません。エージェント曰く地方・フルリモートの紹介案件は減っているものの、自分の肌感としての「決まりにくさ」はまだ限定的です。ここは正直に書いておきます。
まとめ
- フリーランス市場全体の案件数・平均単価は、公開データではまだ崩れていない
- ただしジュニア・定型作業・フルリモート前提の案件には、AI・内製化・出社回帰の逆風が重なっている
- やることは「作業をこなすだけの立ち位置から一歩上がる」「AIを使い倒して守備範囲を広げる」
- 正社員に戻るのもじゅうぶん合理的で、どちらを選んでも危機感を持って動ける人が強い



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